独自技術

ヨウ素と天然ガス

■ヨウ素とは

ヨウ素の性質~「ヨウ素」ってどんなもの?

ヨウ素は工業製品としてはヨードとも呼ばれており、デンプンと反応して紫色に色が変わるヨウ素-デンプン反応や、昆布などの海藻に含まれている栄養分としても良く知られている元素です。ヨウ素は元素であるため化学合成して製造することができず、ヨウ素を含有する資源から取り出す以外に方法がない貴重な資源です。製品となったヨウ素は固体で、金属のように重く、黒紫色の光沢を帯びています。常温でもドライアイスのように昇華(気化)しやすく、特異な臭気があります。

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ヨウ素の用途~「ヨウ素」って何に使うの?

ヨウ素は強い反応性(酸化力)があるため、様々な化合物に加工され、様々な分野で利用されている、生活に欠かせない物資です。また、ヨウ素は人間の成長に必須の元素として、1日の必要量は150μgといわれています。


ヨウ素の主な用途
1.

優れたX線吸収能力を利用して、医薬診断用X線造影剤中に置換基として導入されています。
医薬品や農薬の中にもヨウ素を置換基として持つものがあります。

2.

単体ヨウ素が本来保有する抗微生物作用を利用して、殺菌消毒剤に適用されています。

3.

「ヨード欠乏症」の治療や予防のための製剤として、食塩や飼料などにヨウ素化合物として配合されています。

4.
写真感光剤、触媒、安定化剤、液晶表示板の偏光フィルムなど広い産業用用途を持っています。
また、ヨウ素化合物はその反応性の良さから反応中間体としても広く利用されています。

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ヨウ素の所在~「ヨウ素」ってどこにあるの?

ヨウ素は、ヨウ化物イオンやヨウ素化合物などの状態で海水、海草、かん水、鉱物(硝石)などに含まれていますが、非常に低濃度であるため、この地球上でも経済的に採取できる地域は極めて限られています。世界のヨウ素生産量は年間概ね18,000tで、チリ50%、日本40%、アメリカなど他の地域で10%生産されています。日本の生産量の大部分は、千葉県に広がる水溶性天然ガス鉱床から産出されるかん水から千葉県で生産されており、資源小国の日本においては 特筆すべき貴重な資源です。

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水溶性天然ガス鉱床とは?~「ヨウ素」がある所って?

千葉県に広がる水溶性天然ガス鉱床とは、約200万年~1200万年前にできた地層中に天然ガスと共に眠る塩分を多く含んだ地下水層のことで、この地下水をかん水(鹹水)といいます。この地下水層の成り立ちは、古代の海底に海藻(海藻には多量のヨウ素が含まれており、かつては海藻灰からヨウ素分を抽出していました。)や他の有機物が土砂とともに堆積したものといわれており、これらに含まれていたヨウ素分が長い年月のうちに濃縮され、現在のヨウ素の起源となったものと考えられます。かん水の塩分濃度はほぼ海水と同じですが、ヨウ素濃度が海水の2000倍近くの100ppm前後もあり、これだけのヨウ素が天然に濃縮されている地域は世界的にもめずらしく、その結果、ヨウ素の世界生産の40%に迫る量がこの地域で生産されるようになりました。当社では自社鉱区を有し、かん水とガスを産出しています。

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■天然ガスとは

天然ガスの性質~「天然ガス」ってどんなもの?

通常天然ガスと呼ばれるものは炭化水素を主成分とする天然に産する可燃性のガスであり、油田地帯で産出し、LNG(液化天然ガス)として大量に輸入されていることは一般によく知られているところです。このLNGは多くは石油と共に産出する油溶性ガスであり、メタン、エタン、プロパン、ブタン等を含む混合物です。当社が使用している天然ガスは水溶性天然ガスと呼ばれるもので、千葉をはじめ茨城・埼玉・東京・神奈川県下にまたがる堆積盆を形成した南関東ガス田と称される水溶性天然ガス鉱床からかん水と共に産出するガスです。当社では約28平方キロメートルの自社鉱区を有し、ガスとかん水を産出しています。この天然ガスはほぼ純粋なメタンガスであり、硫黄分を含有しないことから、クリーンなエネルギーとして都市ガス等燃料用に利用され、またそのままで化学原料として使用できます。当社でも、産出するガスを自社で燃料として利用する他、シアン化水素の合成原料として使用し、また都市ガス供給会社に販売もしています。

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天然ガスの所在~「天然ガス」ってどこにあるの?

日本の水溶性天然ガス鉱床は、地域的には、北海道、秋田、新潟、千葉、静岡、宮崎、沖縄などに広く分布していますが、その中でも南関東ガス田は生産量、埋蔵量共に最大の規模を誇っています。特に千葉県に広がる鉱床にはヨウ素分も豊富で、共に産出するかん水からはヨウ素が生産されています。

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天然ガスの由来~「天然ガス」ってどうしてできたの?

千葉県に広がる水溶性天然ガス鉱床とは、約200万年前にできた地層中に天然ガスと共に眠る塩分を多く含んだ地下水層のことで、この地下水をかん水(鹹水)といいます。この地下水層の成り立ちは、地質時代でいえば新生代の第3紀から第4紀(氷河期が始まり、人類が出現した頃)にかけて古代の海底に海藻や他の動植物が土砂とともに堆積したものと推定されています。水溶性天然ガスは、これら地中に埋もれた有機物がバクテリアによって分解されて生まれたメタンガスです。またこの堆積物の中にはヨウ素分を豊富に含む海藻類が多く含まれていたと考えられており、これらの有機物が長い時間をかけて変質し、地中の水に少しずつ溶けて溜まり、濃度を増していったものが現在水溶性天然ガス鉱床に眠る地下水となったと思われます。この地下水は地下約200~2,000mにある砂岩と泥岩の互層から成る上総層群とよばれる地層中の砂泥粒のすき間に存在します。地底では高い圧力によって地下水(かん水)に天然ガスが溶解した状態で存在しますが、これを地上に汲み上げるとガスが遊離して天然ガスとかん水に分離します。かん水の塩分濃度はほぼ海水と同じですが、ヨウ素濃度が海水の2000倍近くの100ppm前後もあり、これだけのヨウ素が天然に濃縮されている地域は世界的にもめずらしく、資源小国の日本においては特筆すべき貴重な資源です。

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ヨウ素の製造方法

当社ではブローアウト法によってヨウ素を製造しています。この方法はヨウ素の気化しやすい性質を利用した製造方法です。かん水にヨウ化物イオン(I)として含まれているヨウ素は100ppm前後と希薄ですが、このような希薄水溶液からヨウ素(I2)を取り出すのに適した方法です。かん水中の砂や不純物を沈殿除去し、酸化剤を加えてヨウ素(I2)を遊離させた後に空気と接触させ、その空気でヨウ素を追い出し(ブローアウト)、それを吸収・晶析・精製してヨウ素を製造します。日本やアメリカなど多くの工場で採用されている方法ですが、当社では50年以上にわたる技術・経験の蓄積とたゆまぬ改良によって、かん水からのヨウ素回収率を向上させ、高い効率で製造しています。


近年の特許:特許第2732635号、特許第2732636号、特許第2732637号、特許第2732642号

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ヨウ素の回収技術

ヨウ素単体やヨウ素化合物は様々な工業製品の製造に使用された後、ヨウ素がその製品中に残らず、排出される場合が多くあります。ヨウ素化合物は反応性が良いため、しばしば反応中間体として使用され、反応後はヨウ素自体は目的物には導入されず、系外に排出されます。これらは、ある工業製品が製造された後のいわば産業廃棄物であり、通称『回収ヨード』と称され、水溶液や固体の形で残ります。回収ヨードの中にはヨウ素分以外にも様々な無機物や有機物が含まれており、そのまま環境中に放出すれば環境負荷につながるだけでなく、貴重な資源であるヨウ素を使い捨てにすることになり、損失は大きいものがあります。当社は環境保護・資源保護の観点から、ヨウ素の回収・再資源化に積極的に取り組んでいます。
回収ヨードには様々な形態があり、ヨウ素の含有量やヨウ素分以外に含まれている成分も様々です。当社では自社での技術開発と経験の蓄積により、それぞれの回収ヨードに適応した適切な前処理を施して、再製品化を行っています。


近年の特許:特許第2539858号、特許第2575152号、特許第4674168号、特許第4758766号

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シアン化水素の合成方法

当社では、産出する天然ガス(メタン)を原料としてアンドリュッソー(Andrussow)法によりシアン化水素を合成し、シアノ化反応に利用しています。長年の技術の蓄積の下、液化シアン化水素を安全に取り扱っています。

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シアン化水素の性質
シアン化水素
化学式
HCN
比重
d20 0.688
分子量
27.03
融点
-13.3℃
   
沸点
25.7℃

よく知られているところでは、シアン化水素はアクリロニトリルの副生物として生成し、生成直後に苛性ソーダとの中和反応によって青化ソーダ(シアン化ナトリウム)が製造されます。ご存知のように青化ソーダはメッキ用途に代表されるように産業上不可欠な化学製品で大量に流通しています。シアン化合物(俗に青酸(セイサン)化合物とも言う)は、有用かつ不可欠な化学物質として、法令にのっとった厳しい管理のもとに産業上広く利用されています。当社では天然ガス(メタン)を産出する地の利を活かして、これを原料としてシアン化水素を合成し、液化シアン化水素として各種シアノ化反応に使用しています。

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シアン処理技術

シアン化合物の製造を行うと、含シアン廃水の発生は避けられません。シアンを完全に取り除かなければこの廃水を放流等によって環境中に排出することはできません。千葉県の排水基準は特に厳しく、シアンについては「検出されないこと」となっています。
当社はシアノ化合物を製造・使用するメーカーの責任として、シアン処理には特に気を配り、シアンを環境中に放出しない体制を確立しています。含シアン廃水の処理については、その廃水の性状に適合した処理法のもとに確実に処理し、更に他の有害物質も除去して排水基準に適合する廃水としています。特に化学的処理が難しい有機シアン系廃水については、産出する天然ガスを燃料として1000℃の高温で焼却処理しています。こうすることによりシアンの他有機分もすべて除去でき、ダイオキシン類も発生しません。